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発展改革委員会 熊必琳氏に訊
作者:土屋 春明    本源:北京事務所    更新時間:2010-2-21 16:04:32

発展改革委員会 熊必琳氏に訊


 

発展改革委員会 熊必琳氏に訊く
―非鉄金属産業の調整および振興計画―


<北京事務所  土屋 春明 報告>

 1. はじめに
 2009年2月25日、”非鉄金属産業の調整および振興計画(以下、『振興計画』)”が国務院で採択されたことを受け、中国非鉄金属業界に大きな安堵のため息がひろがった。数ヶ月間に及ぶ業界関係者たちの懸念にようやく一応の着地点が見出されたのである。


国家発展改革委員会 産業協調司副司長 熊必琳氏
 振興計画は、大筋で国務院の承認を得たものの、業界関係者たちの胸中にはなおも多くの疑問が渦巻いている。今回の振興計画は果たしてどれほどの効力を持つのか?巨額の欠損を抱えた企業を谷底から救い上げる策とは?国による在庫買い上げや電力の直接購入の試行など、論争の焦点となっている法案は本当に実施できるのか?業界の変革を促す対策とは?国は支援のためにどの位の予算を割く用意があるのか?
 国務院から振興計画が正式に公布されるのに先立ち、雑誌『中国投資』と『人民網』は共同で振興計画の策定に深く関わる人物、国家発展改革委員会の産業協調司副司長のポストにある熊必琳氏を訪ね、詳細な単独インタビュー行っている。
 本稿では、インタビュー内容の詳細について紹介する。なお、熊必琳氏は、4月14日~16日東京で約3年ぶりに開催されたレアアース交流会議の中国側代表団の団長でもある。

2. 「待ったなし」の産業振興
記者:非鉄金属は鉄鋼・自動車・石油化学等の産業に比べて、工業増加価値(工業総生産額から中間投入額を差し引いた額)はさほど高くなく、GDPへの貢献度も大きいとは言えないにも拘わらず、なぜ国は非鉄金属産業を調整・振興対象の10大産業の一つに組み入れているのか?
熊氏:確かに非鉄金属は鉄鋼・自動車・石油化学等の産業に比べれば規模の小さな産業と言えるが、その重要性や戦略的な地位は明らかである。非鉄金属は重要な基礎原材料であり、製品の種類も多く、関連分野も広い。付加価値性も高く、ハイテク産業を振興する上で支えとなる材料を生む産業である。電力・交通・建築・機械・電子情報・航空・宇宙・国防・軍需工業などの広い分野で利用されており、国の経済や社会の発展や雇用面で大きな役割を果たしている。
 2008年、中国の銅・アルミ・鉛・亜鉛・ニッケル・アンチモン・水銀・マグネシウム・チタンといった合計10種類の非鉄金属の生産量は2,520万tに達し、一定規模以上の企業による工業増加価値は5,766億元(830億US$相当)で、全国のGDPに占める割合は1.9%であった。非鉄金属産業に直接従事する就業人口は300万人に上り、中国は非鉄金属の世界最大の生産・消費国である。
 中国の非鉄金属産業は資源の状況や製品価格において世界市場と完全に同調しているため、今回の金融危機でかなり大きな打撃を受けており、そのダメージの大きさは他の業界を上回っている。消費が勢いを失い、価格が大幅に下落した。2008年7月上旬から同年12月末にかけての各種非鉄金属の価格下落幅は、銅58%・アルミニウム44%・鉛43%・亜鉛43%・ニッケル49%となっている。2008年9月から10月にかけて非鉄金属の価格が暴落したことを受け、長期契約のもとに輸入していた銅・鉛・亜鉛精鉱等の原料価格が同時期における原料のスポット価格を上回るという事態になった。中国非鉄金属工業協会の統計によれば、業界73の重点企業の第4四半期における欠損は127億元に上った。業界全体で赤字を出したことになる。このような状況下、企業では在庫が急増し、運転資金が不足するようになった。加えて生産量も大幅に減少し、生産停止に追い込まれた企業も多い。業界全体が多くの問題を抱えている今、非鉄金属産業の振興策を講じることは、一刻の猶予も許されない状況にある。

記者:最近、国内における非鉄金属の主要品目の価格はやや上向きの傾向にあるが、これは業界が最悪の時期を脱したということを示すものなのか?今年の情勢の見通しについてどう考えるか?
熊氏:このところ銅・アルミ・鉛・亜鉛・ニッケル・チタンなどの価格がいくらか上昇しているのは、国の在庫買い上げや内需拡大政策が功を奏し始めたのと、少し前に見られた市場の過剰反応が一段落したことによるものである。とは言え、市場の力のない状況にいまだ根本的な変化は見られない。目下のところ、国際的な金融危機による非鉄金属業界への影響はなおも広がりつつある。2009年の世界全体の銅とアルミの需要量は、銅1,790万t、アルミ3,740万tと予想されており、前年比はそれぞれ1.6%減と3%減である。国内市場も下降傾向にあり、2009年の各種主要金属の予想消費量は銅490万t、アルミ1,250万t、鉛270万t、亜鉛350万tで、前年比では銅2%減、アルミ0.8%減、鉛11.5%減、亜鉛5.4%減となっている。アルミ材の輸出量は約100万t落ち込んで、前年比50%減となることが予想されている。
 従って、市場に一時的な回復の兆しが現れたからといって、情勢を楽観し過ぎてはならない。今は、企業は冷静な判断を行い、関係省庁や業界団体も理性的な態度で情勢を見極め、対応すべき時である。

3. 大規模な調整は必然の成り行き
記者:非鉄金属業界の危機的状況は一種の必然、というのはどういう意味か?
熊氏:振興計画では、現在非鉄金属業界が直面している状況は、金融危機という外部要因の他に、業界自身の構造上の問題という内部要因にも起因していると強調している。つまり、長期間にわたって粗放型の発展が続いた間に蓄積された矛盾が、市場が変化を迎えたのを機に噴出してきたということであり、これは各方面が共通して認識しているところである。非鉄金属業界が数年に及ぶ高度成長を経た今、ここで大規模な調整を行うことは必然の成り行きである。

記者:現在、非鉄金属業界が抱える根深い問題にはどのようなものがあるのか?
熊氏:現在の非鉄金属業界は、以下のような多くの根深い矛盾や問題を抱えている。
[1]一部の製品や生産能力が過剰になっている。2008年度末の時点で、電解アルミの既存および建設中の生産能力は1,800万tを上回っているが、同年の消費量は1,260万tで、産業能力が消費量を大幅に超えている。この他に銅・鉛・亜鉛・チタン生産の分野にも、後先を考えない開発が原因で、原料供給と需要の深刻なアンバランスが生じている。
[2]産業全体のバランス調整を早急に行うことが必要である。近年、一部の地方では盲目的な投資に走り、エネルギーや資源に乏しく、環境容量も小さい地域におよそ300万t級の電解アルミや1,000万t級の酸化アルミ生産プラントが建設されている。また、資源の状況や環境保護の必要性を顧みず、100万t近い規模の鉛や亜鉛のプラントを建設したところもある。しかも技術レベルは低い。現在、これらのプラントの多くはすでに減産あるいは生産停止に追い込まれている。
[3]産業集約化の程度が低い。各種主要金属の製錬業を営む企業数を見ると、銅40・アルミ97・鉛および亜鉛200となっており、平均生産規模は銅が9万t/年、アルミが17万t/年、鉛および亜鉛が4万t/年と規模が小さく、諸外国の平均値である銅15万t/年、アルミ25万t/年、鉛および亜鉛10万t/年を下回っている。また、電解アルミ生産においては企業コストの40%を電気料金が占めると言われているが、わが国ではその企業の大半が自家発電設備を持っておらず、市場リスクに対する抵抗力が弱いことも問題である。
[4]資源の供給保障の面で弱い。わが国の非鉄金属資源はもともと豊富とは言えず、海外への依存度が高い。2008年の各種金属製品の海外依存率は、銅73%、アルミ53%、鉛31%、亜鉛32%、ニッケル78%である。現在、わが国は国外に銅約8万t、鉛・ニッケル約6万tに上る生産権益を保有しているが、日本の銅115万t、韓国の亜鉛80万tの権益保有量に比べ大きな開きがある。しかも、わが国の資源開発利用の水準は低く、銅・鉛・亜鉛の大量の低品位鉱をはじめ、主要鉱物と同一鉱床に存在する鉱物や選鉱・製錬が困難な鉱物がいまだ十分に利用されていない。石炭とアルミの同時産出が可能な資源についても、現時点では燃料用石炭の生産に使われているのみで、アルミ資源は利用されていない。
[5]自主技術革新能力が不十分である。企業の技術開発力が弱く、電子情報・国防軍需工業・航空などの重点分野における高性能材料のニーズに応えることができていない。航空機用の中厚板や高精度印刷用のアルミ板、無酸素銅材、フレーム材などの銅・アルミ・チタンの加工製品の水準はなおも低-中レベルにあり、大量に輸入する必要がある。加えて、高精度圧廷機や大断面・複雑断面形状押出し機などのキー・テクノロジー機器も主として輸入に頼っているのが現状だ。
[6]リサイクル利用の水準が低い。非鉄金属の原料リサイクルシステムが確立されていない。企業の数は一万にも上るが、規模が小さく、技術・設備面で遅れている上に、汚染物の排出量やエネルギーの消費量も大きい。資源のリサイクル率が低く、市場の変化に順応する力が弱い。世界的な金融危機の影響で、金属リサイクル業を営む多くの企業が生産停止の状態に追い込まれている。現在、銅くずから銅材を生産する企業の70%、アルミのリサイクル企業の50%以上、鉛のリサイクルを行う企業の60%以上が生産を停止している。
[7]立ち遅れた企業の淘汰がなかなか進まない。2008年度末の時点で、技術・設備面で立ち遅れた生産能力の状況は以下の通りである。プリベーク1式小型電解槽による電解アルミの生産能力は80万t、銅製錬生産能力は30万t、亜鉛製錬生産能力は40万t、旧式焼結炉による鉛精錬能力は60万tに上る。この他にも環境保護基準をクリアしておらず、エネルギー消費量の大きい鉛焼結機による生産能力が未だ150万t弱ある。

記者:長期的な観点から、非鉄金属産業の今後をどう見据えているか?
熊氏:まず、非鉄金属業界では大規模な調整を行うことになるであろう。国とし
ては業界が持続可能な発展の道を歩むように支援していく。わが国が都市化・工業化・情報化を実現する上で、非鉄金属産業は重要な役割を果たすという考え方に変りはない。また、ハイテク産業の成長を支える産業としての位置づけや産業発展の基本路線にも変更はない。従って、「非鉄金属産業の調整および振興計画」の策定と実施によって総合的な対策を講じ、国内市場の安定を図る。世界的な金融危機によってもたらされた淘汰のメカニズムを利用して、立ち遅れた工場の淘汰を進め、企業の統合再編を促し、成長パターンの転換と産業構造の最適化を図る。同時に、世界的な資源価格の下落という機に乗じて、中国企業が海外に進出して鉱産資源の権益を獲得することを奨励し、新たな経済サイクルにおいてイニシアチブを握れるようにする。これは非鉄金属産業の持続可能な発展を促す上で重要な意義を持っている。

1 アルミ製錬において、アルミの酸化物であるアルミナを、氷晶石などのふっ化物を高温で溶かした電解浴を使用し、陰極板(カソード)と陽極板(アソード)を設置した電解炉に入れて電気分解により還元する。電解炉は陽極の形状によりゼータベルク式とプリベーク式があり、近年は電流容量の増加や環境問題にも対応するプリベーク式が主流となっている。アルミ[原料]その1 、やさしい技術読本 1997年3月発行、神戸製鋼(http://www.kobelco.co.jp/alcu/technical/almi/1173955_2752.html

4. 新政策では「対症療法と根治療法」を併用
記者:振興計画の基本原則や計画目標について簡単に説明いただきたい。
熊氏:今回の振興計画には5つの基本原則がある。成長の維持と構造調整を同時進行させるという考えに立って、短期的な対策と長期的な対策、対症療法的な策と根治療法的な施策の両方を盛り込んだ内容となっている。
[1]危機への対処と産業振興を結び付ける。非鉄金属業界が現在直面している困難な状況を打開し、市場の安定を図り、先進的な生産力・重点企業・主要製品を守ることで産業が安定的に進展していけるようにする。市場の淘汰メカニズムを利用して、各種の有利な要素を生かしながら、産業の構造調整を進め、業界の競争力を高める。
[2]総量コントロールと産業全体の再配置をリンクさせる。エネルギー・資源・環境・市場などの条件に則って生産能力の拡張を厳しく規制する一方で、技術的に立ち遅れた工場の淘汰を進める。非鉄金属業界と川上・川下産業との合併を促し、資源やエネルギー面で優位性を持つ中西部地域において製品加工業を振興し、産業全体の配置調整を行う。
[3]自主イノベーションと技術変革を結び付ける。キー・テクノロジーの導入という段階からその技術を自己のものとして消化し、再創造に向かう段階へと進み、個々の技術に対する研究開発を集結させ、それらを創造へと繋げていく取り組みに転換していく。創造的かつ先進的な技術を積極的に応用することで産業に変革をもたらし、技術と設備のレベルや製品のクォリティの向上、製品の品目の拡大、資源とエネルギー浪費の削減を実現する。つまり科学技術力の後押しによって産業構造の変革を進めるということである。
[4]業界の再編と体制改革を結びつける。体制を改革することで、企業再編の過程で発生しがちな財政税収や利益の分配・資産の振り分け・債務審査や処置等における障害を取り除く。非鉄金属業界におけるグループ企業の形成と地域間・業界間の企業再編を進めるために有利な体制を整える。
[5]資源の開発と節約を並行して進める。国内の非鉄金属資源を適切に開発利用し、内需を満足させることに中心に置き、直接輸出を制限し、間接輸出を奨励する。海外での資源開発を積極的に行う。循環型経済への転換に注力し、リサイクルの実施水準を上げ、資源の節約と総合利用を進める。
 振興計画の目標としては、まず2009年の非鉄金属業界を安定させるということがある。3年後(2011年)の到達目標として、非鉄金属産業が成長に向けて安定した軌道に乗り、産業構造の改善、成長パターンの転換、イノベーション能力の著しい向上が見られ、業界が持続的に発展していくための土台を築くことを掲げている。

記者:それらの目標を達成するために、どのような財政・税収面の施策や関連制度などの細則を打ち出す予定か?
熊氏:振興計画では、12項目の対策と実施を保障するための条件を打ち出している。具体的には以下の通り。輸出税収政策の改善、国による在庫買い上げの早急な実施、技術改革への投入拡大、企業の統合や再編に関する政策、企業の海外進出支援、産業政策の改定、資源の適正配置、「アメとムチ」を使い分けた融資政策の続行、省エネ・汚染物排出量削減基準に反した対象への責任制度、産業リスク情報の交換・開示制度の確立、協会の担うべき役割、政策実施後の評価制度など。

5. 焦点―国による在庫買い上げ実施と電力直接購入の試行
記者:国による在庫買い上げが業界の一つの焦点になっているが、現在、この政策の実施に関してはどの段階まで進んでいるのか?また、どの企業の製品を買い上げるのか、という選択に関してはどのような原則に沿って行っているのか?
熊氏:国務院の承認を得て以降、国家発展改革委員会はすでに銅・アルミ・亜鉛などの非鉄金属に対して一部買い上げを実施している。これは市場が自信を回復し、企業の製品在庫を減らし、運転資金不足を解消し、市場価格を安定させる上で有効な方法である。実際、アルミと亜鉛の価格は2008年度末に比べて上昇している。しかし、非鉄金属の市場価格は現在もなお低めであり、企業の在庫も多い。現在のような情勢下では、国による在庫買い上げ強化の必要性は非常に高いと考えている。それゆえに振興計画の中でも銅・アルミ・亜鉛について国による在庫買い上げを引き続き実施する旨を明確にしている。情勢の成り行きによっては、買い上げの規模拡大を検討することも視野に入れている。国としては、国の環境保護基準や土地法規、投資管理規定に合致している国有企業を重点的に支援していくつもりだ。

記者:電力の直接購入の試行を実施するか否かというのが振興計画策定上の一つの争点になっているが、国務院はこの件を承認したのか?もし承認したのであれば、いつ頃の実施が可能か?
熊氏:国務院によって原則採択された振興計画では、「電力直接購入の試行を進め、企業の活力を増強する」ことを非鉄金属産業の調整・振興策の主要施策の一つとして位置付けている。また、電力直接購入の試行を早急に進め、国の環境保護基準や土地法規、投資管理規定に合致し、産業構造調整に貢献できる中核的な電解アルミ企業を重点的に支援することで、その生産コストの削減と企業の体質強化を図るべきであると明確に述べている。現在すでに中国アルミ業の支社や、包頭アルミ業、雲南アルミ業など合計15の企業が試行対象として決定しており、今後の状況を見ながら、試行の対象企業を徐々に増やしていく予定である。電力の直接購入を試行する目的としては、巨額の欠損を抱えた企業が一日も早く通常の稼動状態に戻れるようにするということに加えて、発電会社・電力網会社・需要家企業の間で安定した需給関係を維持し、好循環を形成するということがあり、多方面に利益をもたらす施策である。直接購入した場合の電力価格は一般の電力価格に比べ1kWh当たり0.03~0.06元安くなるので、電解アルミの電力消費量を約14,000kWh/tとして、1t当たりのコストを300~800元削減できることになる。電解アルミの生産企業が通常の稼動状況を取り戻すのに貢献できるものと思われる。
 振興計画の中に電力の直接購入の試行を重点事業として盛り込むことについては、国務院も原則承認しているが、この措置は可能な限り早く実施する必要があるため、関係省庁と国家電力監督管理委員会、電力網会社などの間で話し合いを重ねた上で、実施細則や実施方法を早急に打ち出さなければならない。

記者:国による在庫買い上げと電力の直接購入の試行は、あたかも溺れる者に“わら“を投げるような一時しのぎの策に過ぎず、企業の競争力を根本から向上させることにはつながらないという意見もあるが、その点についてはどう考えるか?また振興計画にはどのような”根治策“があるのか?
熊氏:前述したように、現在は危機の最中という特殊な状況にあり、業界全体が深刻な赤字に陥っている。まず先進的な生産能力や中核企業を危機から救い出すことが先決だ。そうして初めて産業の将来について語ることができるというものではないだろうか。これらの措置が“救命”用のものであることは確かだが、しかし“わら”ではなく、“浮き輪”だと考えて欲しい。しかも、目下は業界が生き残れるか否かという状況であり、将来に向けて体力をつける上でもこの措置は必要不可欠だ。さらには、国による在庫買い上げと電力直接購入の試行は性質を異にする措置である。国による在庫買い上げは短期的な行為に過ぎず、その目的は市場に自信を持たせることや企業の資金繰り圧力の緩和、価格の安定化にある。国としても今後3年間ずっと継続して買い上げるというようなことはあり得ないであろう。一方、電力の直接購入は継続して推進していく措置であり、システムとしての確立を目指す方向で努力していくべきものである。もちろん、これらの応急措置だけでは、非鉄金属業界の調整・振興には全くもって十分とは言えない。そのためにこの振興計画では5つの大原則と12項目の対策を打ち出している。技術改革に対する投資の強化、企業統合や企業の海外進出に対する奨励、淘汰メカニズムを利用して企業管理を強化すること、資源の利用水準を上げることなどはどれも“根治策”であり、企業の総合競争力を強化し、業界内の根深い問題を解決する上でも役立つものである。

6.大を保護し、小を淘汰して一石三鳥を目指す
記者:非鉄金属業界の統合再編を促し、産業の集約化を進めるために、振興計画にはどのような具体措置が盛り込まれているのか?
熊氏:振興計画では業界の再編を促し、企業の総合的な競争力を強化することを重点事業の一つに挙げている。実力を備えた銅・アルミ・鉛・亜鉛などの生産企業がさまざまな形で再編を行い、規模の拡大やグループ化を図ることで産業の競争力を高めることを奨励している。中央企業(中央政府が監督・管理を行う国有企業)の地域間での統合・再編や、地方の企業の域内または企業グループ間の再編、アルミ生産企業と石炭業・電力会社などの業界を越えた再編、金属のリサイクル企業間の再編などについて支援を行う。
 同時に、国は企業の再編統合に関する政策措置の充実と実施に努める。具体的には、人員の配置や企業資産の振り分け・債務審査と処置・利益分配等の問題を適切に解決することや、経営統合の推進、コーポレート・ガバナンスの整備や企業のマネジメント・レベルの向上、省・区を越えて経営統合を実施した大企業の技術改革関連プロジェクトに対して行う支援策などが含まれる。

記者:業界再編に当っての具体的な達成目標は?
熊氏:3~5グループの実力ある総合企業集団を形成するという目標がある。全国生産量において銅・アルミ・鉛・亜鉛分野の国内トップテン企業による生産量の合計が占める割合を、2007年の銅73%、アルミ57%、鉛40%、亜鉛52%から2011年には銅90%、アルミ70%、鉛60%、亜鉛60%にまで引き上げる。

記者:再編によって規模化を図るには、立ち遅れた産業能力の淘汰が必然となるが、これについて国はどう対処するつもりか?
熊氏:期限をきって立ち遅れた生産能力を淘汰していかなければならない。振興計画では、2009年の淘汰目標を銅製錬30万t、鉛製錬60万t、亜鉛製錬40万tとしているほか、技術的に遅れたプリベーク式小型電解槽を使用している電解アルミの生産能力を2010年度末までに80万t淘汰することになっている。同時に厳しい総量制限を実施し、国の産業政策に従って、今後3年間は電解アルミの生産プラントの新設・増設を原則許可しない。業界参入基準と登録制度を厳格に守り、銅・アルミ・亜鉛・チタン・マグネシウム生産工場の新設を制限する。反射炉・送風炉を使用している銅製錬工場や焼結炉を使用している鉛精錬工場、設備の立ち遅れた亜鉛製錬工場、プリベーク式小型電解槽を使用している電解アルミ工場の淘汰を期限どおりに完了させる。加えて、エネルギー消費量が大きく、汚染排出の多い焼結機鉛製錬工場も段階的に淘汰していく。

記者:エネルギー消費量と汚染物質排出量が大きいというのが非鉄金属業界の特徴だが、それが非難の対象にもなっている。業界が苦境に陥っている時は、省エネ・汚染物質排出削減の要求基準を緩めてもよいのではないかという意見もあるが、これについてはどう考えるか?
熊氏:私の考えは全く反対だ。なぜなら非鉄金属業界の高エネルギー消費・高汚染排出という問題は、主に立ち遅れた生産能力が根源となって起こっているからだ。業界が危機的状況にある今こそ、粗放型の成長パターンによって生じた多くの弊害を市場の淘汰メカニズムに頼る形で一掃し、遅れた生産能力を淘汰することで、更に高い省エネ・汚染物質排出削減目標を達成することができるものと思われる。
 なお、振興計画では省エネ・汚染物質排出削減において成果を挙げることを重要な目標として掲げている。2010年までの具体的な数値目標としては、国家重点電解アルミプラントにおける直接の電力消費量を12,500kWh/t以下に引き下げ、粗鉛製錬に係るエネルギー総合消費量を石炭に換算して380kg/t以下に抑えることに加えて、イオウの利用率を97%以上に引き上げ、余熱回収利用率をほぼ100%にし、固形廃棄物の無公害化処理率を100%にすることが挙げられている。その他にも年間で石炭に換算して170万t相当のエネルギー消費をカットすることや、電力消費を60億kWh節減し、二酸化イオウの排出量を約85万t削減することなどが目標として掲げられている。

記者:立ち遅れた生産能力を淘汰し、省エネ・汚染物質排出削減目標を達成するための補助的政策としては、どのようなものが振興計画に盛り込まれているのか?
熊氏:省エネ・汚染物質排出削減に違反した企業に対しては、淘汰を含む責任追及制度を厳しく適用するようにする。遅れた生産能力の淘汰システムについてさらなる検討・改善を加え、淘汰の際に発生する従業員の再就職や企業の財産譲渡、債務処置などの問題に適切に対処して社会の調和と安定を維持しなければならない。また、省エネ・汚染物質排出削減に係る責任追及制度を厳格に実行するため、『国務院による省エネ・汚染物排出量削減の統計モニタリングおよび審査実施プランと方法に関する通知』に従って、省エネ・汚染物質排出削減義務を果たしていない地域に対しては、同地域での投資プロジェクトの申請に対し一定期間審査・認可を差し止める等の措置を採る。検査チームを立ち上げ、経済・法律・環境保護やその他の必要な行政手段を総合的に駆使して、立ち遅れた企業への監督検査を強化し、検査結果を公表する。各級地方政府は、期限付きで淘汰が義務付けられている工場に対し厳重な監督・管理を行い、それらが勝手に拡張工事を行ったり、他地域へ移転したりしないようにする。それらの企業に対し金融機関はいかなる形式であっても貸し付けを提供することはできず、国土資源管理部門も用地手続きを行ってはならない。

記者:大を保護し、小を淘汰するための措置として他にはどのようなものがあるか?
熊氏:まず金融面での支援が挙げられる。“アメとムチ”を相手によって使い分ける融資政策を引き続き実施する。非鉄金属業界の重点企業に対する融資支援に一層力を傾け、産業政策・環境保護・土地法規・投資管理規定をクリアしているプラントや合併・再編・海外進出・技術改革などを積極的に進めている企業に対しては、株券発行・企業債券・公司債券・銀行貸付などの面で支援を行う。法律違反や越権認可によって不当に建設されたプラントや技術・設備の立ち遅れた企業に対しては、引き続き融資制限などの措置を以って対応する。
次に、資源を適切に分配するという観点から鉱山資源分配のあるべき姿を具体化し、大型鉱区を国の鉱産資源開発計画に組み入れ、重点企業に対し優先的に分配することで鉱産資源が効率よく、利用されるようにする。
 また、企業の海外進出支援や国による在庫買い上げ、電力の直接購入の試行、技術改革プロジェクトなどの全ての施策において、進んだ企業を保護し、立ち遅れた企業を淘汰するという姿勢を貫く。

7. 国内外からの資源供給を確かなものに
記者:資源の供給保障という点での弱さが非鉄金属産業の成長にとって大きな課題になっているということだが、振興計画では、中国企業が海外に進出して資源開発や買収を行うことに対してどのような支援策を設けているのか?
熊氏:国内外で資源開発を進めることは非鉄金属業界が資源供給力を増強するための重要な方途となる。国は必要条件を備えた企業が国外で単独出資あるいは合弁のかたちで鉱山経営を行うことを支援する。中国アルミ業、五鉱有色金属、中冶集団などが海外で工場を建設する予定にしている。
 海外進出企業に対する国の支援策としては以下がある。
[1]中核的企業が直接投資や株式購入などの方法を通じて国外の資源保有国との協力関係を強化し、国内で不足している銅・ニッケル・アルミ・鉛・亜鉛などの資源を獲得し、資源の供給力を強化することを支援する。
[2]海外工場の認可手続きを簡略化し、貸付・外貨・保険・財政・税収・人員の出入国などの面における政策を整える。
[3]海外資産の経営管理を強化し、海外資産リスクの解消と防止に努める。
[4]海外での資源開発に関する計画を策定し、海外資源開発事業への参入を厳しく制限する一方で、参入資格を備えた中核的企業に対しては、資本注入や外貨使用などの面で支援提供を行う。

記者:欧米などの工業化が進んだ国では、金属のリサイクル事業を“都市鉱山の開発”と呼んでいるが、わが国では再生利用率は低い。非鉄金属の総合利用のレベルを上げるために、どのような対策があるのか?
熊氏:まず国としては企業が進んだ技術を採用して、銅・鉛・亜鉛の低品位鉱や主要鉱物の生産過程で二次的に産出される鉱物、選鉱・製錬が困難な鉱物、尾鉱、スラグなどの開発利用を進めて、資源の総合利用を支援する。石炭・アルミが共生する鉱床については資源利用計画を策定し、アルミ含有量の多い微粉炭フライアッシュの利用に関するモデルプロジェクトを実施する。銅・鉛・亜鉛の製錬余熱の利用を進める。スラグや赤泥などの固形廃棄物の再利用を進め、生産過程における“ゼロ・エミッション”を実現する。また、社会全体を網羅する非鉄金属のリサイクルシステムを確立し、条件を備えた地域に非鉄金属の回収取引市場や解体市場をつくることを支援する。条件のある企業が高効率・省エネ型・低汚染設備を導入し、年間生産量30万t以上の再生銅・アルミなどの生産ラインを設置することを支援する。資源化の規模拡大や技術・製品等級の向上、鉱産資源の消費削減に貢献する取り組みに対し支援提供を行う。
記者:資源供給能力の強化に関する達成目標にはどのようなものがあるか?
熊氏:国内外の資源を開発し、供給量の増加を図るという点では、2011年までに銅・アルミ・ニッケルの原料供給能力を、銅40%・アルミ56%・ニッケル38%にまで引き上げることを目標としている。石炭・アルミ共生鉱床の開発利用に関しては、それによって酸化アルミの生産量を100万t拡大することを目標にしている。2011年の再生銅と再生アルミがそれぞれの総生産量に占める割合を再生銅35%、再生アルミ25%にまで増やし、2008年の値に比べて再生銅は6ポイント、再生アルミで4ポイント上昇するようにする。

8. 自己の競争力強化が根本
記者:技術改革を推進するための政策支援には具体的にどのようなものがあるのか?
熊氏:国は技術改革を進めるための取り組みを強化する。中央政府の予算に技術進歩という枠を設け、貸付や利子補填という形で非鉄金属業界の技術の研究開発を支援する。また同時に、省エネ技術に対する財政的な報奨も強化し、企業が進んで省エネ技術を開発利用することを奨励する。
 国の産業政策に合致し、規定通りの認可過程を経て設立した中核企業や、国防軍需工業・航空宇宙・電子情報などのキー・マテリアル生産企業を重点的に支援していく。国は技術改造と研究開発特別プロジェクトを展開し、連続製銅法やアルミ製錬の先進的省エネ技術など、中国が出遅れている分野の開発強化に努め、国民経済の重点分野において必要とされるハイテクによる加工プロジェクトを実施する。進んだ製錬技術を広め、立ち遅れた工場を淘汰し、技術・設備の水準を向上させる。

記者:企業の技術面の進歩を支援するという点については、振興計画ではどのような目標を掲げているのか?
熊氏:振興計画では、2010年までに中国非鉄金属業界のイノベーション能力を大幅に増強することを目標に掲げている。独創型イノベーション・集成型イノベーション・導入消化吸収後の更なるイノベーションを通じて技術や設備の水準を引き上げ、キー・テクノロジーや省エネ技術、高性能製品の研究開発・生産・応用技術面で大きな進歩を遂げることを目指している。技術改革によって産業技術の進歩を後押しし、製品の品質を上げ、品目構成の最適化を図る。富化酸素吹込み法などの進んだ鉛製錬技術を採用したプラントの全体に占める割合を70%まで引き上げ、フレーム材・無酸素銅テープ・中厚板など銅・アルミの高級製品の国内ニーズをほぼ満たすようにしていく。

記者:危機に瀕している多くの非鉄金属業界の企業に対して何か提言をいただきたい。
熊氏:非鉄金属業界の企業は現在の市場淘汰メカニズムを十分に利用し、コーポレート・ガバナンスや各種責任制度を整え、市場に対する予見能力や判断力を養い、リスクマネージメント意識を高め、国際競争力の増強に努めるべきである。マネジメント面での改革を進め、品質管理、生産管理制度や安全操業規則などを整備し、社会的責任を自ら進んで果たすようにして欲しい。そして省エネとコスト管理をしっかり行ってコスト削減と収益増大に努めてもらいたい。
 同時に、企業は管理の情報化を更に重視して、経営効率を上げる必要がある。企業文化の醸成と人材の育成に努め、特に経営管理や技術分野で資質の高い人材を育成することに力を入れるべきであり、それが企業に持続可能な発展をもたらす源となる。逆境・順境に関係なく、企業にとっては常に自社の競争力を高め、体質強化に努めることが成長の根本であると考える。

9.実行こそがカギである
記者:たとえ振興計画がいかに良いものであっても、肝心なのはそれを実行できるかである。国は関連細則の策定や実施に関してどのようなタイムスケジュールを設定しているのか?
熊氏:まさにそのとおりで、振興計画が効力を発揮できるかどうかは、関係各方面が着実に実行に移せるか否かにかかっている。
 2009年は、国による在庫用買い上げと輸出税の還付率の引き上げ、技術進歩プロジェクト、電力直接購入の試行など直接市場を保護するための対策を講じる。同時に、関係情報の交換・開示制度の設立に着手し、「産業構造調整指導目録」や関連産業政策を改定する。向こう3年以内にマクロ経済措置の調整を実施し、立ち遅れた生産能力の淘汰や企業再編、海外での資源開発などを推し進め、業界が安定して成長していけるようにする。
 国家発展改革委員会が工業情報化部など複数の省庁と共同で『計画』を起草するプロセスにおいて、関係省庁や団体、企業などから寄せられた建設的な意見を取り入れており、内容については各方面のコンセンサスを得ている。対策を確実に実行に移すために、振興計画では各関係省庁の役割分担表と進捗管理表を作成している。さらに、国が公布した政策の実施状況や効果をフォローアップするため、重大政策の事後評価制度を設けて、新たな政策制定にフィードバックさせることを現在検討中である。この制度は環境保護部や中国国際工程諮詢公司などの機関が実務を担当する予定である。
 各省庁が一致協力して取り組むことで、振興計画は期待されている効果を必ずや発揮できるものと確信している。

10.おわりに
 3月19日に開催された中国有色金属工業協会第2期4回理事会の報告では、2008年の中国非鉄金属産業界の利益は、昨年10月からの国際的金融危機の影響を受け、対前年比45%減の800億元にとどまったと報告されている。今回国務院で採択された振興計画は、中国非鉄金属産業界の緊急避難的な救済措置策であると同時に、同業界が抱えている企業の数が多過ぎるなどの産業構造的問題にも言及した計画である。
 中国有色金属工業協会の康義会長は同理事会において、2009年は、中国非鉄金属業界に最も厳しい一年となるが、非鉄金属業界の安定的成長を促進するため同協会は、振興計画の実施細則の作成に協力し、本計画を全業界に徹底するため全力を尽くすと語っており、引き続き同計画の具体策について注視する必要がある。


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